バチカン銀行 (1)バチカン株式会社

先月、産経ニュースに「バチカン銀行の資金押収 「闇」の解明なるか」という記事が載りました。

バチカン銀行の資金押収 「闇」の解明なるか
2010.9.22 19:27

 【ロンドン=木村正人】「神の銀行」といわれるローマ法王庁バチカン)の財政管理組織「宗教事業協会」(通称・バチカン銀行)の資産2300万ユーロ(約26億円)がイタリア司法当局にマネーロンダリング資金洗浄)の疑いで押収された。法王庁は容疑を否定している。同行をめぐっては1980年代に不正融資疑惑が発覚したが、関係者が次々と変死し、真相は解明されずに終わっている。

 ローマからの報道によると、バチカン銀行は今月中旬、イタリアの銀行クレジト・アルティジャーノに預けていた資金をドイツ・フランクフルトの米JPモルガン・チェースなど2行に受取人を明らかにしないまま送金しようとした。このため、イタリア中央銀行が同国の司法当局に通報した。ゴティテデスキ総裁ら銀行幹部2人が捜査対象という。

 バチカン銀行は昨年11月にも受取人を明らかにしないまま計1億8千万ユーロ(約203億円)を送金していた疑惑が発覚し、伊司法当局が捜査していた。同行は長年にわたり顧客の身元を明かさず、他行への送金を代行していたとされる。

 法王庁は21日、「当惑し驚いている」と表明、同行の業務は公明に行われていると強調した。バチカン市国主権国家のため伊司法当局の捜査がどこまで進むのか疑問視する声もある。

 ローマ法王は17日、訪問先の英国で金融危機について「経済活動に関する堅固な倫理規定がなかったため」と説教した。イタリアのカトリック大学で金融倫理を教えていたゴティテデスキ氏は1年前、同行総裁に就任、法王と同じく倫理を失った現代資本主義を厳しく批判し、タックスヘイブン租税回避地)規制など銀行の近代化に取り組んでいた。

 バチカン銀行は1942年に設立され、法王直属の枢機卿からなる委員会によって運営されている。以前はマフィアとのかかわりが指摘され、改革を唱えた法王ヨハネ・パウロ1世が78年、就任1カ月余で死亡。82年に主力取引行のイタリアの銀行の不正融資が発覚し頭取が変死。歴代頭取の秘書も自殺、バチカン銀行が関与していた疑惑も浮上し、大スキャンダルとなった。

http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100922/erp1009221931006-n1.htm

バチカン銀行とは一体どのような“銀行”なのでしょうか。これからしばらくジャンルイージ・ヌッツィ『バチカン株式会社』柏書房(2010年10月)をベースに、バチカンが中心になった不正金融操作の実態を紹介するとともに、「基金」や「財団」の影の役割を明らかにしたいと思います。

バチカン株式会社―金融市場を動かす神の汚れた手

バチカン株式会社―金融市場を動かす神の汚れた手

まずは、『バチカン株式会社』の目次です。

目次

序章 いまバチカンで何が起きているのか

第1部 バチカンの秘密文書
 第一章 マルチンクスの繁栄と没落
 第二章 イタリア首相の裏口座
 第三章 架空名義の口座群
 第四章 動き出した巨額賄賂
 第五章 司法当局対バチカン銀行
 第六章 隠蔽工作
 第七章 教皇庁を欺く不逞の輩たち
 第八章 教皇の金庫、教皇の株式会社
第2部 マフィアとバチカン
 第一章 高位聖職者たちの陰謀
 第二章 告発されたバチカン

長くなったので、Amazonの内容紹介を引用して、一度締めたいと思います。

イタリア司法当局は9月21日までに、ローマ教皇庁バチカン)の活動資金を管理運用する「宗教事業協会」(通称バチカン銀行)が、巨額の資金洗浄を行っていた疑いがあるとして、ゴッティテデスキ頭取らに対する本格的な捜査に乗り出しました。  この衝撃的なニュースは世界中のメディアによって報じられました。世界各地に総計10億人超の信者を抱えるカトリック教会の(寄付献金を含む)巨額の資金にかかわる問題だけに、AP、AFP、共同、時事など世界の通信社に始まり、BBC、CNN、New York Times、Independentなど英米の大手メディアがトップ記事として報じ、翌22日には日本でも朝日新聞や読売新聞、産經新聞などがこの事件についてとり上げています。  バチカン銀行には、昨年11月にも、別口の資金移動について資金洗浄の疑いがかけられており、イタリア司法当局が捜査を進めていたところでした。司法当局は今回、およそ1年におよぶこれまでの捜査結果を踏まえ、資金洗浄の対象となった可能性が高い約26億円を押収するという実力行使に出たわけです。  じつは、こうした「司法当局対バチカン」の緊迫した構図をつくり出すきっかけとなったのが、昨年5月にイタリアで刊行された本書『バチカン株式会社(原題、Vaticano S.p.A)』なのです。イタリア国内でいま最も有名なジャーナリストの一人であるジャンルイージ・ヌッツィがこの本を書いたのは、教皇庁のとある要人から、いまだかつて世に出たことのない膨大な機密文書を託されたからでした。  教皇庁の要人とは、レナート・ダルドッツィ師(1922〜2003)です。バチカンの行政機関である国務省の顧問として、20年以上にわたって教皇庁に仕えたダルドッツィ師は、1980年代以降、バチカン銀行を中心とする不正金融操作の実態を目の当たりにしてきました。そして、世を去るまさにその間際、ダルドッツィ師はみずから収集した4,000点以上もの内部資料をスイス南部の田舎町の農家に隠し、右派新聞の敏腕記者として名を馳せていたヌッツィ記者だけに、その隠し場所を伝えたのです。すべての人々に、どんなことが起きたのか、真実を知ってもらうためこれらの文章を公表してほしい、という遺言とともに。  ヌッツィはこのダルドッツィの機密資料を命がけで手に入れ、1年以上かけて緻密な資料分析と追加取材をおこない、昨年5月にその成果を発表しました。その日本語訳が本書です。