21世紀の国際関係 −序章

m39532009-02-14

最近読んだ本の中で、ジョージ・フリードマンの『The Next 100 Years: A Forecast for the 21st Century 』がとても面白かったので、皆さんに紹介したいと思います。彼は地政学の専門家で、STRATFOR(http://www.stratfor.com/)という国際関係のシンクタンクを立ち上げています。彼のこれまでの知見をもとに、地政学の観点から21世紀の国際関係がどうなるかを書き下ろした著作です。

まず、21世紀の国際関係に大きな影響を及ぼすいくつかの要素から説明しましょう。

パラダイム・シフト − 欧州から北米へ
過去500年間は北大西洋を支配した国が世界を支配しました。スペイン、オランダ、イギリスがこれにあたります。ところが、1980年代前半にパラダイム・シフトが起こり、北大西洋に加え、北太平洋が大きな存在感を持つようになりました。世界経済は、北大西洋北太平洋の両大洋の二つの軸を持つようになり、この両大洋の中間に位置する北米大陸地政学的に圧倒的に優位な地位に立つことになりました。この両大洋にまたがる海軍力を持つことが決定的に重要になります。

米国覇権の始まり
この北米大陸および両大洋をコントロールする国、つまり米国が21世紀も世界の中心として君臨し続けます。米国は、経済的、軍事的、政治的のいずれの観点においても他国の追随を許さない圧倒的な立場を維持し続けます。国際関係における米国の基本戦略は、個々の紛争・戦争に完全勝利することではなく、米国の世界覇権に挑戦するような反米勢力の結集、もう少し正確に言うと米国の海軍帝国を脅かす新たな海軍勢力の台頭を妨げることにあります。

21世紀を支配する原理 ― 米国vs.反米勢力
21世紀は、圧倒的な国力で世界にその影響力を及ぼし続ける米国と、反米陣営の形成を試みる諸勢力との間の紛争・戦争が頻発する世紀になります。ただし、技術革新と地政学的な制約から紛争・戦争の被害は20世紀に比べてずっと小さいものとなります。
また、21世紀の国際関係は、五つの活断層に沿って展開されます。環太平洋地域、ソ連崩壊後のユーラシア大陸、欧州、イスラム世界、米墨関係の五つの活断層です。現在、この活断層で反米勢力として想定されているロシアおよび中国は、地政学的、人口動態的な限界に直面し、21世紀前半、それもかなり早い時期に自壊します。そして、ロシア、中国の崩壊に呼応して三つの勢力−日本、トルコ、ポーランドが台頭します。この三国に米国を交えた四カ国の動向が21世紀を大きく左右することになります。

宇宙空間における技術革新
また、20世紀と同様に21世紀もまた戦争によって大きな技術革新がもたらされます。技術革新の大きな柱は、宇宙開発、太陽光発電、ロボットです。特に宇宙開発が決定的な役割を果たします。海洋支配と宇宙空間支配は表裏一体の関係にあり、軍事的な観点から宇宙開発が急ピッチで進められます。2040年代に勃発する世界大戦の間に、宇宙太陽光発電が軍事用途として実用化され、21世紀後半に商業用化され、人類は新たなエネルギー革命を迎えます。

人口バブルの崩壊
さらに、21世紀は人類史上の大きな大転換期を迎えます。人口爆発の終焉です。2050年までに先進国は劇的な人口減退期を迎えます。これまで世界の経済、軍事、社会などありとあらゆるシステムは人口増加を前提に作られてきたため、この前提が崩れることで、あらゆるシステムが抜本的な変革を求められます。人類はこれまで以上に技術への依存度を高めるようになり、なかでもロボット技術が重要な役割を果たすことになります。また、21世紀前半は、人口バブルが崩壊し、先進工業国の間で深刻な労働力不足が顕在化します。その結果、先進国はこぞって移民推進政策を講じるようになり、これが国際紛争の要因になるのです。

実際のフリードマンの著作は、もう少し定量的なデータが紹介されていますが、概ねこんな感じです。

次回からもう少し時代を追ってフリードマンの見解を紹介していきましょう。