21世紀の国際関係 ―第二次冷戦(〜2020年)

今回と次回で、反米勢力の中心と目されているロシア及び中国が2020年までに自壊するというフリードマンのシナリオをご紹介したいと思います。

★ロシアの復活と自壊

ロシアは、深刻な人口動態的な問題と地政学的な問題を抱えています。まず、ロシアは、他の先進国同様、深刻な人口減少問題に直面します。プーチン政権は、ロシアの産業構造を一変し、労働集約的な工業化を推進する代わりに、天然資源事業を国家事業の主軸とすることで、人口減少問題を回避しつつ、ロシアを経済的に復活させました。経済的な復活は軍事的な復活に直結します。ロシアは資源価格高騰によって得た利潤を、軍事技術開発に費やし、ロシア軍の再興を図ります。

ロシアが抱えるもう一つの問題は、地政学的にみて必ずしも強固とは言えない広大な国土にあります。ロシアは、人口減少が国力減少に直結する前に、他国との境界線をできるだけモスクワから遠ざけようと、周辺地域への積極的な干渉を再開します。具体的には、コーカサス中央アジア、そしてバルト海を含む欧州の三方面への活動を積極化します。

まずは、コーカサス地方 。2008年夏のグルジア侵攻以降、同地方におけるロシアの影響力は増大します。さらに、結局のところロシアに頼らざるを得ない中央アジアも 、2010年代の早い時期に再びロシアの影響下に入ることになります。そして、欧州方面でも、2010年前後には軍事力を駆使せずして、ベラルーシウクライナの両国がロシアの影響下に入ることになるでしょう。こうして2010年代前半には、ロシアは旧ソ連時代の領域の大部分を回復し、バルト海方面を残すのみとなります 。ロシアは、ポーランド国境沿いにロシア軍を配置するとともに、2010年半ばにバルト三国に具体的な圧力をかけ始めます 。

この時期のNATOは、ロシア制裁に消極的な姿勢をとり続けるドイツの影響を受け、この第二次冷戦に積極的な役割を果たさないまま終わります 。

さて、一方の米国は、ポーランド及びバルト三国に対する軍事技術供与という形でロシアの勢力拡大を阻止しようと試みます。米国は、東欧諸国の支援を通じて、欧州を分断しようとも考えており、強すぎる欧州、強すぎるロシアを牽制するための一石二鳥の手として、東欧支援を積極化します。

これに対して、ロシアは、イスラエルと対立するアラブ諸国に対する軍事援助を強化するなど、米国の政治資源、軍事資源を分散させるべく世界各地に働きかけます。こうして2015年になると世界各地で紛争が勃発するようになり、2020年頃の世界は、第二次冷戦の様相を呈します。

しかし、20世紀の冷戦と異なり、21世紀の第二次冷戦は、米国の支援を受けたポーランドチェコハンガリールーマニアが対ロシアの前線に立ち、カルパティア山脈が境界線となります。また、米国はトルコと手を組み、コーカサス地方にプレッシャーをかけ、ロシアはじわじわと後退を迫られます。さらに、2020年も過ぎると、人口減少や周辺地方の反発等を背景に、対立の争点となっていたポーランドの北部平原にロシアは軍を進めることができず、最終的には、第一次冷戦と同じくロシアの自滅という形で、第二次大戦は幕を閉じます。