日本の金融史(5)大正バブル

今回は、大正時代(1912-1926)の金融史です。まずは、大正バブルがはじけるまでのお話です。第一次大戦の戦争景気(1914〜1918) 第一次大戦前の日本経済は対外債務の累積により、財政破綻への道をまっしぐらに進んでいました。そもそもの問題の始まりは、…

日本の金融史(4)金本位制への復帰

日本は、1871年(明治4年)に「新貨条例」を定めて、新貨幣単位「円」とともに金本位制へ移行しますが、金貨の国外流出が続いたため、金銀複本位制を経て暫時銀本位制に変更されます。日清戦争後に金本位制に復帰しますが、金本位制復帰を決定した「貨幣制度…

日本の金融史(3)国立銀行の設立

今回は、国立銀行についてまとめてみたいと思います。ナショナル・バンク方式とセントラル・バンク方式の対立の影に三井組がいました。このあたりも含めて整理してみました。国立銀行条例(1872年) 1872年(明治5年)に制定された国立銀行条例は、当時のア…

日本の金融史(2)金本位制

さて、1870年に初の国債発行に成功した明治政府は、1871年に新貨条例を制定し、金本位制を採用しました。実際は、貿易目的に使用するために洋銀と同価値の「一円銀貨」も造られていたため、実質的には複本位制でした。伊藤博文が1870年12月(明治3年)にアメ…

日本の金融史(1)幕末の幣制と明治政府の国債発行

バチカン銀行の続きを書くまとまった時間がなかなかとれないので、自分の頭の整理のために「旧MATRIX」から日本の金融史についてバラバラと書いたモノを一部修正しながら転記していきたいと思います。まずは、幕末の貨幣制度から明治政府による初の国債発行…

バチカン銀行 (3)1970年代〜アンブロジヤーノ銀行事件

イタリアにインテーザ・サンパオロ銀行(Intesa Sanpaolo)というメガバンクがあります。2007年にインテーザ銀行(Banca Intesa)とサンパオロIMI銀行(Sanpaolo IMI)が合併してインテーザ・サンパオロ銀行になり、2010年6月時点の総資産額は約6,500億ユー…

バチカン銀行 (2)バチカン銀行の概要

さて、今回は「バチカン銀行」がいかなる組織であるのか、を紹介しましょう。「バチカン銀行」の正式名称は、「宗教活動協会(IOR:Institute for Works of Religion)」であり、1942年にピウス十二世(位1939-1958)によりバチカン市国内に設立されました。…

バチカン銀行 (1)バチカン株式会社

先月、産経ニュースに「バチカン銀行の資金押収 「闇」の解明なるか」という記事が載りました。 バチカン銀行の資金押収 「闇」の解明なるか 2010.9.22 19:27 【ロンドン=木村正人】「神の銀行」といわれるローマ法王庁(バチカン)の財政管理組織「宗教事…

地球最後の日のための種子(3)

“地球最後の日のための貯蔵庫”の概要を簡単に説明しましょう。正式名称は、スヴァールバル世界種子貯蔵庫(The Svalbard Global Seed Vault)であり、2008年の2月26日に開所式が行われました。この種子貯蔵庫は、ノルディック遺伝資源センター(通称ノルドゲ…

地球最後の日のための種子(2)

さて、ここまでは本ブログの序章という位置付けで、ここからが本題の「グローバル人事政策」です。本著の主人公であるベント・スコウマンは、もともとCIMMYTと呼ばれる国際トウモロコシ・小麦改良センターで数十年も同組織を率いてきました。そのスコウマン…

地球最後の日のための種子(1)

一年半ぶりにちゃんとブログを書いてみようと思います。テーマは、遺伝資源です。最近、『地球最後の日のための種子』を読んだので、この本を出所として、思うところをまとめてみたいと思います。個人的に注目しているのは、本著の中心人物であるベント・ス…

キャロル・キグリー教授

まだ、「21世紀の国際関係」が終わっていないのですが、次々回以降から、キャロル・キグリー教授の『悲劇と希望(Tragedy and Hope: A History of the World in Our Time)』をつまみ食い的にご紹介したいと思います。そこで、今日は、キャロル・キグリー教…

21世紀の国際関係 −開戦前夜

前回、「次回は、ジョージ・フリードマンが21世紀の大きな節目として描いた世界大戦(宇宙大戦)を物語風に紹介したいと思います」と締めましたが、一度、2040年まで各国の状況をおさらいしておきたいと思います。米国覇権の世紀 過去500年続いた北大西洋を…

21世紀の国際関係 −分断から拡大の時代へ突入するポーランド

今回は、ジョージ・フリードマンが、日本、トルコと並び21世紀に新興勢力としてその台頭を予想したポーランドについて見ていきたいと思います。いきなりポーランドに焦点を当てる前に、ジョージ・フリードマンの欧州観からご紹介しましょう。 一つになれない…

21世紀の国際関係 −戦争の宇宙化

今回は、21世紀の戦争がどのようなものになるのかを見ていきたいと思います。まずは、20世紀の戦争のレビューから始めましょう。20世紀の戦争 −低い命中率がもたらした戦争の「全体化」 第一次世界大戦、第二次世界大戦の大きな特徴は、戦争が「全体化」され…

21世紀の国際関係 −トルコ再び(2010~40年代)

少し時間が空きましたが、引き続きジョージ・フリードマンの「The Next 100 Year」をベースに21世紀の世界を見ていきたいと思います。欧州を中心に米露間で繰り広げられる第二次冷戦、米国の支援を受けたトルコは、その軍事的な存在感を飛躍的に増大させます…

21世紀の国際関係 −方向転換を迫られる日本(2020~40年代)

2020年代にロシアと中国が自壊することによって、ユーラシア大陸は混乱の時代を迎えます。以前に触れたよう、この時代に三つの新興勢力が台頭します。日本、トルコ、ポーランドです。いずれも対ロシア、対中国の観点から米国が積極的に支援を行っていた国々…

21世紀の国際関係 −五十年周期説と2030年の米国

今回は随分と長くなってしまいましたが、2020~30年代の米国に関するフリードマンのシナリオをご紹介したいと思います。フリードマンの発想の原点は、五十年周期説です。米国は、建国以来、五十年周期で社会構造の変化に端を発する政治的な転換期を迎えてきた…

21世紀の国際関係 −張子の虎 (〜2020年)

前回に引き続き、反米陣営の主力と目されている中国について、ジョージ・フリードマンの見解を紹介したいと思います。 三つの将来シナリオ 中国に関しては、三つの将来シナリオを想定することができます。一つは、これまでと同様の驚異的な経済成長を継続す…

21世紀の国際関係 ―第二次冷戦(〜2020年)

今回と次回で、反米勢力の中心と目されているロシア及び中国が2020年までに自壊するというフリードマンのシナリオをご紹介したいと思います。 ★ロシアの復活と自壊 ロシアは、深刻な人口動態的な問題と地政学的な問題を抱えています。まず、ロシアは、他の先…

21世紀の国際関係 −序章

最近読んだ本の中で、ジョージ・フリードマンの『The Next 100 Years: A Forecast for the 21st Century 』がとても面白かったので、皆さんに紹介したいと思います。彼は地政学の専門家で、STRATFOR(http://www.stratfor.com/)という国際関係のシンクタン…

The Origin of Financial Crises (6)

さて、今回は、金本位制度から不換紙幣制度への移行段階における中央銀行の役割について見ていきたいと思います。George Cooperは、ハイパーインフレーションの典型例としてよく教科書で紹介されているドイツではなく、米国に焦点を当てて検討を行っています…

The Origin of Financial Crises (5)

引き続きGeorge Cooperの『The Origin of Financial Crises』をベースに、中央銀行の役割について見ていきたいと思います。ステージ5:金本位制度– Gold Standard 金預託証書を用いた部分準備銀行制度は、信用創造を通じて経済発展に大きく寄与する一方、銀…

The Origin of Financial Crises (4)

さて、今回もGeorge Cooperの『The Origin of Financial Crises』をベースに、中央銀行の役割について見ていきたいと思います。中央銀行とインフレーション 日本銀行法では、日本銀行の目的を、「我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及…

The Origin of Financial Crises (3)

今回は、Efficient Market HypothesisとFinancial Instability Hypothesisの両理論と中央銀行の関係について見ていきたいと思います(特段の断りが無い限り、本ブログの内容は、George Cooperの『The Origin of Financial Crises』に依拠しています。一部、G…

The Origin of Financial Crises (2)

財・サービス市場と資産市場 まず初めに、同著は、サミュエルソン(Paul A. Samuelson)の“Economics, An Introductory Analysis”の一部を引用します。 Everybody receives money for what he sells and uses this money to buy what he withes. If more is …

The Origin of Financial Crises (1)

LivedoorのBlogから引っ越してきました。 Matrix (http://blog.livedoor.jp/m3953/)最後のブログから半年以上が経ってしまいましたが、久しぶりにブログを再開しようと思います。まずは、George Cooper氏の『The Origin of Financial Crises』をベースに、昨…